昼間、クライアントから仕様変更が間に合わず、マニュアルで対応して欲しいとの連絡が入り、チーム全員残業。
お腹すいた。
今月グローバーオールのダッフルコート買っちゃったし、節約しなきゃいけないから買食いも我慢かなぁ、でもチームのみんなもお腹すいてるだろうなぁ・・・
そんな心の声が聞こえたのか、所長から「ファミチキ買ってきたから取りに来てよ」と内線。
所長の席に行くと、「みんなに配って」と、やけに上品な陶器の皿の上にファミチキ8個山盛り。紙皿じゃないのは所長のこだわりか。
大机で校正してくれている派遣さん3人に配った後、同僚のサナちゃんのデスクに持っていったら、サナちゃんがファミチキを取りながら皿を見てる。
「その皿、去年の納会で所長の奥さんがサンドイッチ持ってきた時のウェッジウッドじゃない?所長、まだ家に持って帰ってないんだ」
ウェッジウッド。
英国王室御用達。
残り4人。皿を持つ手つきが変わった。肩もゴリゴリしてきた。
最後まで配り終え、自分の席でファミチキを食べた。
小腹は満足したけど、ウェッジウッドを見たら、ファミチキの油で虹色に輝いている。
この皿に乗るべきはブルーベリータルトであって、絶対にファミチキではない。
小腹の満足感が、ウェッジウッドの虹色に打ち消され、ゼロに近づいていく・・・
すぐに給湯室に向かい、そっと洗った。
陶器って、濡れると妙に薄く感じる。水切りに置いて帰る勇気がまったく湧かない。
私は、キッチンペーパーを何枚か切って、自分のデスクに即席ウェッジウッド布団を作り、そっと置いて会社を出た。
帰りの都営浅草線でウェッジウッドの気品を思い出した。
所長、明日は浜松本社っていってたなぁ。
お皿がデスクにある間、心の収支はずっとマイナス。

